偽りの幸せ

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 会いたいときに会えない……  声が聞きたいときに聞けない……  ---でもちゃんと繋がっている微かな安心感。  不安はあるものの前みたいにずっとじゃないし、胸がほっこりするような幸せ感もある。  でもそれも束の間ですぐにスッと気持ちが抜け、その後に襲ってくる寂しさは大きい。  まるで発作の方に起こる寂しさの波に胸が締め付けられ、呼吸をするのも苦しいと感じてしまうときがある。  ---もう完全に重症だ。  理恵と違って私は恋愛体質ではないと思っていたのに、こんなにものめりこむなんて思わなかった。  どこがそんなに良いんだろう……  何が私をそんなに夢中にさせるんだろう……  いくら考えても答えは出ず、ただただ篤くんへの想いが募り胸を苦しくさせるだけだった。  でも悩みに悩んだ私はひとつの賭けをすることにした---何の得もないような自己満足の賭けを。  あの日からまだ数日しか経っていないせいか篤くんとは一度も会っていない。  今、私が"会いたい"って言ったら篤くんは会ってくれるだろうか?  会えないのなら、この先もこの状態は変わらず私はずっと苦しみ続けることになるだろうと思ったから。 .
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