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「今すぐには無理だけど、ちゃんと別れるから……」
軽く私を抱き寄せながら篤くんは約束の言葉をくれた。
でもそれはテレビとかで見る不倫相手に言う台詞と同じで、少しだけ胸が痛んだ。
篤くんは違う……
篤くんは大丈夫……
篤くんは……
自分の中に生まれた不安を打ち消すかのように心の中で何度も何度も唱え続ける。
それでも不安は消えなくて思わず篤くんの服を掴むと私の気持ちに気づいてくれたのか、その手を包むように握り返してくれた。
私より少しだけ温かい篤くんの手に包まれ、不思議と徐々に不安が薄れていくように感じられた。
「待ってる。---会いたい」
篤くんの手の温もりに安心できたのか自分でも不思議なくらい素直な気持ちが自然と言葉として零れ落ちてきた。
「うん、俺も」
篤くんの言葉が胸をじんわりと温めてゆく。
そしてまだ全然、中途半端な関係なのに"幸せ"って感じてしまっている自分に気づく。
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