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泣き叫ぶ私が落ち着くまで篤くんはずっと抱きしめ、そして何度も何度も子供を慰めるように優しく頭を撫で続けてくれた。
篤くんの手があまりに優しくて……
篤くんの腕の中があまりにも心地よくて……
私は泣きやんでも、しばらくは抱きついたまま離れる事ができなかった。
「俺が悪いんだけど、随分遠回りしたな」
少しバツ悪そうに篤くんが苦笑いを見せるが、私は嬉しくて笑ってしまった。
「遠回りしても今こうしていられるからいい」
口にしてから恥ずかしさが込み上げてきたが、恥ずかしさより嬉しさの方が勝っていて私は今の幸せに浸るように篤くんに身を寄せる。
何度も挫け、後悔したけど素直に自分の気持ちを伝えたことで今こうして側に居られる幸せはかけがえのないもの。
好き---たった一言なのに、なかなか言えなかった言葉。
でも、その一言が……
その気持ちが……
最後の最後に頑なな私の心を突き動かした。
好き……
篤くんと出会い、それがすごく大切で幸せな言葉だと私は……
私たちは初めて知ることができた。
―end―
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