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最後だと思うと今までの楽しかった事、辛かった事、そして悲しかった事が一気に走馬灯のように思い出され胸がいっぱいになってゆく。
でも我慢しなきゃ……
今泣いてしまったら篤くんが気にしちゃうし、じぶんを止める事ができなくなってしまう。
じんわりと溢れ出て来る涙が零れ落ちないように必死に堪えながら、篤くんの言葉に相づちを打ち続ける。
少しずつ2人の間のぎこちなさが薄れてきたかなと思った矢先、篤くんが耳を疑うような事を口にする。
「---え?」
聞こえていたくせに動揺のあまり聞き返してしまう。
「だから今、誰かと付き合ってる人いるのかなって……」
言いにくそうに私の様子を気にしながら、もう一度聞いてくる。
すごく答えに迷って……
勿論付き合っている人なんていない……
いるわけない……
篤くんを忘れられないって本当は言いたかったけど、それを言ったら篤くんが困る---そして私自身も……
だから私は嘘をつく。
好きだと……
忘れられないと……
泣きすがりたい気持ちもあったが、最後くらい綺麗に終わりたい。
篤くんの記憶に少しでも良い形で残りたいって思った。
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