緊急手術

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…… ……………サン……… ……カンザキサン……… 「神崎さん、神崎さん」 耳もとで名を呼ばれ、肩をトントンと叩かれる。 「……ウウ…ウウッ」 深い眠りから引き戻された私は、あまりの苦しさに目を見開いた。 くっ……苦しいっ! 体は動かず声も出ない。 喉に感じる大きな不快感にもがく。 「大丈夫だからね、今から挿管チューブ抜くから。少し苦しいけど頑張って」 麻酔医はそう言葉を掛けると、口に挿入されているチューブを抜き去った。 「ゴホッ…ゴホッゴホッ!」 挿管チューブが抜けた瞬間、激しい咳が込み上げた。 咳き込む度に、ナースが口腔内に溜まった痰と唾液を吸引する。 「大丈夫?ごめんね、苦しかったね。お疲れさま」 河合先生が覗き込み声をかける。 「…はい…」 まだ朦朧する意識の中で、かろうじて言葉を返した。 「…先生…オペは?…終わったんですか?…」 眠っていたのがほんの一瞬に感じる。 喉の違和感を残したまま声を絞り出した。 「オペは無事終わったよ。腫瘍の種類もやっぱり良性腫瘍だったから。卵巣嚢腫の中の皮様嚢胞腫。中身は人によって歯だったり黄色い脂肪だったりするけど、神崎さんのは髪の毛が一杯詰まってた」 河合先生はニッコリと微笑んだ。 …そうか、オペ終わったんだ。髪の毛…そんなものが詰まってたんだ…。 天井の照明を眩しそうに眺める。
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