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どれくらい眠っていただろうか…
麻酔が完全に醒め、目を覚ましたと同時に嘔気が込み上げる。
母が私の苦しむ姿を心配してナースコールを押した。
「神崎さん、完全に目が覚めた?点滴の中にプリンぺラン入れるね。気持ち悪いのはしばらくするとおさまるから」
私をオペ室に迎えに来たナースが、点滴の中に嘔気止めの薬剤を注入する。
「神崎さん、お疲れさま。よく頑張ったね」
そう声を掛けながら次に部屋に訪れたのは、カルテを片手にした河合先生だった。
「先生、ありがとうございます」
込み上げる胃の不快感を我慢しながらも、感謝の意を込めて笑みを作る。
「…神崎さん、オペの結果説明を今からいいかな?」
先生は一瞬にして表情を曇らせる。
「…はい、お願いします」
私は首を傾げながら先生の表情を見つめた。
先生の言葉を待つ私の手を母が握りしめる。
……お母さん?
母の手に込められた力の強さに驚き、私は先生に向けていた視線を母に移した。
母は私の手を握ったまま口もとで笑みを作るが…
明らかに母の様子がおかしい。
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