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「綾子っ!!」
叫び声と一緒に、床に響く足音。
「今、病棟に連絡しといたから!河合先生が救急室で待ってる。大丈夫だからね!」
霞んだ瞳に、唯と管理人さんの姿が映る。
二人に肩を抱かれエレベーターを降りると、寮を出た所で、二人のナースがストレッチャーを押して走って来るのが見えた。
毛布にくるまれて救急室に向かう。
痛みで呼吸が乱れているせいか、指先が痺れる。
気持ち悪い…。
次第に胃の辺りにも不快感を感じる。
「河合先生!」
救急処置室の自動扉が開いたと同時に、唯が声を上げた。
「神崎さん、大丈夫?今からすぐエコーするから。血管確保して採血もさせてね」
先生は、痛みでうずくまる私の頭にそっと手のひらを置き、柔らかな声で言った。
「はい…お願いします」
辛うじて体の向きを変え、掠れた声を洩らす。
触診とエコーでの診察。
エコーのプローベが左下腹部を押す度に激痛が走り、叫びそうになる声を必死に殺す。
やっぱり…捻転なの?…
エコー画面を凝視する先生の横顔を、不安げに見上げる。
機械の操作をする音が、余計に恐怖心を煽る。
次々とプリントアウトされていくフィルムを見つめながら、自然と滲む涙を然り気無く指で拭った。
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