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オペ室の準備ができるまでに、CT撮影と麻酔の準備を受ける。
静脈から注入されていく鎮痛剤で、多少は痛みが緩和されていく気がする。
私はただ目を閉じ、自分の中で沸き起こる、最悪の事態の想定に身を震わせていた。
……
「綾子…痛いの?大丈夫?」
耳もとで、心配そうに囁く声に驚き目を開ける。
「お母さん…どうして…」
「唯ちゃんから連絡があって…。今、主治医の先生から説明を受けたよ。大丈夫、きっと手術うまく行くから」
母は微笑み、壊れ物を扱うように優しく私の下腹部に手を添える。
お母さん……。
会うのは二ヶ月…三ヶ月ぶりだろうか…
懐かしいと言えるほど会っていない訳ではないのに、母の顔がとても懐かしく感じる…。
「…うん、心配かけてごめんね…お母さん…」
プツンと緊張の糸が切れたのか、涙腺が緩む。
目にいっぱい涙を溜め、そっと母の手に触れた。
「バカ、何がごめんなの。お父さんは出張で今日は来れないけど、明日の夕方にはこっちに来るから。だから頑張っておいで。お父さんの分まで祈りながら手術室の前で待ってる」
母は私の手を握り、目を細めて笑った。
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