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「神崎さん、オペ室に行きますね」
麻酔の前投薬を注射したナースが、血圧を測りながら声を掛けた。
「はい…お願いします」
私は静かに頷き再び目を閉じる。
隣に付き添っていた母は深々と頭を下げ、ストレッチャーから手を離した。
唯と病棟の主任、そして岡崎から高速に乗って駆け付けてくれた母に見送られ、オペ室へと向かう。
「神崎綾子さん、今からオペ室の中に入って行きますね。部屋に入ったら直ぐに麻酔導入になりますから」
目だけが見える、全身水色のオペ着に包まれたナースが私を見下ろした。
初めて入る室内は、幾つかの部屋が並び扉が閉められている。
和馬…オペ中なのかな。
私がこんな事になってるって知ったら驚くよね。
和馬……
恐いよ……
私、翔太に酷いことしたから…
梨花さんに酷いことしてるから…これも罰なのかな?
これは私への天罰なの?
どうか、私の体を奪わないで…
…女である証を奪わないで…。
麻酔科医が口もとにマスクを乗せる。
次第に薄れていく意識。
……神様………
……お願いします…
私はひたすら祈り続け、深い眠りに落ちた。
……
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