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「寺下くん」
「何だ?」
「冷蔵庫の中身貸して貰えるかな。……お腹空いちゃったから」
「…お前、意味わかってないな」
そう言いながら、俺の頬を引っ張る。
「ここはお前ん家だから、断りとか要らないんだから。わかったか?」
「わ、わひゃりましゅた」
そう俺が言うと、満足そうに笑う。
「でも、プリンは食うなよ?」
うんと俺は頷いた。ヒリヒリする頬。
何を作ろうか。取り敢えず、冷蔵庫の中身をみてから考えようかな。
「あ、あの、何食べたい?簡単なものしか作れないけど」
「何でも」
何でもって答えが一番大変。
取り敢えず、小松菜あったからお浸し。調味料は、少なからず揃えてあった。
炊飯器の中に、ご飯は入っていない。
何とか、冷凍室にうどんが入ってたから肉うどんにしようかな。
明日の為に、米をといておこう。
キュウリやキャベツで浅漬け。
何だか、ひとりで食べていた時以上に、誰かと食べれる幸せなのかな。
作るって凄く楽しい。
「嬉しそうだな。料理好きなのか?」
「うーん、普通かな。でも、誰かと…寺下くんと一緒に食べれると思ったら嬉しくて。これからも、一緒食べれると思うと幸せだなと思ったら。つい…」
そんなに、ニヤついてたのかな。自重しなきゃな。
「お前って、本当に直球過ぎ」
そう言いながら、寺下くんはテーブルに俯せになっていた。
「も、もうちょっとで、完成だから待っててね」
「…わかった」
そうだ、プリン作ろうかな。
驚くかな。喜んでくれるかな。
プリンは、寺下くんが寝ている時にこっそり作ろう。
今は、夕食に取り掛からないと。
俯せだった寺下くんは、顔をあげて俺の方を見ていた。
蛇足だけど、キッチンは対面式である。
ふと、眼があったから俺ははにかんだ。照れ隠しの為に。
そして、また寺下くんはテーブルに俯せになっていた。
眠たいのかな。
急がなきゃな。
「出来た。盛り付けも終わった」
「俺、持っていく。何もしてないし」
「い、いいよ。悪いし」
「俺がしたいんだ、な?」
「ありがとう、ございます」
「よし」
その間、俺は使った調理器具を洗った。
ニヤついた顔を見せれない。嬉し過ぎて、自重出来そうにないから。
「ありがとう」
「おう」
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