第1話

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「寺下くん」 「何だ?」 「冷蔵庫の中身貸して貰えるかな。……お腹空いちゃったから」 「…お前、意味わかってないな」 そう言いながら、俺の頬を引っ張る。 「ここはお前ん家だから、断りとか要らないんだから。わかったか?」 「わ、わひゃりましゅた」 そう俺が言うと、満足そうに笑う。 「でも、プリンは食うなよ?」 うんと俺は頷いた。ヒリヒリする頬。 何を作ろうか。取り敢えず、冷蔵庫の中身をみてから考えようかな。 「あ、あの、何食べたい?簡単なものしか作れないけど」 「何でも」 何でもって答えが一番大変。 取り敢えず、小松菜あったからお浸し。調味料は、少なからず揃えてあった。 炊飯器の中に、ご飯は入っていない。 何とか、冷凍室にうどんが入ってたから肉うどんにしようかな。 明日の為に、米をといておこう。 キュウリやキャベツで浅漬け。 何だか、ひとりで食べていた時以上に、誰かと食べれる幸せなのかな。 作るって凄く楽しい。 「嬉しそうだな。料理好きなのか?」 「うーん、普通かな。でも、誰かと…寺下くんと一緒に食べれると思ったら嬉しくて。これからも、一緒食べれると思うと幸せだなと思ったら。つい…」 そんなに、ニヤついてたのかな。自重しなきゃな。 「お前って、本当に直球過ぎ」 そう言いながら、寺下くんはテーブルに俯せになっていた。 「も、もうちょっとで、完成だから待っててね」 「…わかった」 そうだ、プリン作ろうかな。 驚くかな。喜んでくれるかな。 プリンは、寺下くんが寝ている時にこっそり作ろう。 今は、夕食に取り掛からないと。 俯せだった寺下くんは、顔をあげて俺の方を見ていた。 蛇足だけど、キッチンは対面式である。 ふと、眼があったから俺ははにかんだ。照れ隠しの為に。 そして、また寺下くんはテーブルに俯せになっていた。 眠たいのかな。 急がなきゃな。 「出来た。盛り付けも終わった」 「俺、持っていく。何もしてないし」 「い、いいよ。悪いし」 「俺がしたいんだ、な?」 「ありがとう、ございます」 「よし」 その間、俺は使った調理器具を洗った。 ニヤついた顔を見せれない。嬉し過ぎて、自重出来そうにないから。 「ありがとう」 「おう」
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