第1話

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夕食の献立は、小松菜のお浸しと肉うどん。デザートに、りんごのコンポート。 りんごのコンポートにいたっては、俺が食べたかった。それだけ。 「美味そうだな」 「そう?良かった」 「頂きます」 うわあ、緊張する。今日、一日の中で一番の緊張かも。 味見はちゃんとしたから、多分大丈夫。でも、味見し過ぎてわからなくなてきたから、適当かも。 うどん、硬さ大丈夫かな。 柔すぎなかったかな。硬めが、好きだったら。 お浸し、俺的には丁度良いけど、味濃いかな。 どうしよう、心配。 「あんまり、見んなよ。食べづらい」 「あ、ごめん。味、どうかなって心配だったから。美味しい?」 「ああ、美味いよ」 「本当。…良かった」 その一言が、聞きたくて。嬉しくて、嬉しくて…。 「あ、ありがとう」 「馬鹿だな。凄く、美味い。だから、お前も食えよ?冷める前に」 泣きたかった訳じゃない。けど、涙が止まらない。 「うん、ありがとう」 その後、美味しくりんごのコンポートも食べた。主に、俺がね。 「ごめんね」 「構わない。茶碗くらい、俺でも洗える」 「ありがとう。大浴場、一緒に行こう?」 「そうだな。その前に、その顔どにかし無いとな」 今度は、俺がテーブルに顔を俯せにした。どうしようもないくらい、恥ずかしい。 「大丈夫、だよ。ほら」 「眼と鼻が赤い」 「…でも、誰も俺の顔なんて見無いし。俺、男だ…か、ら」 忘れてた。ここは、ホモ高である事を。 ただの、男子校だと勘違いしてた。けど、俺は無いわ。 「……大丈夫だよ?」 必然的に上目遣いに見上げると、はぁと寺下くん溜息を吐いた。どちらかと言えば、寺下くんの方が危ない気がする。 ほら、顔可愛いし。 「俺が守ってやる」 いやいや、寺下くんはどちらかと言えば守るより、守られるタイプだと思うな。 「今、何思った?」 何て鋭い感。 「う、ううん。ありがとう」 もういっそう、部屋で入っちゃった方が早いかも。何て、思いながらも俺はお風呂の準備をした。
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