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「美味しいです」
「ああ、美味い」
何だか、照れ臭いけど嬉しい。
「あ、ありがとう」
「山田、今日…遊びに行かないか?」
「ご、ごめん。今日は、用事あるから。でも、誘ってくれてありがとう」
西村くんには申し訳ないが、バイトを探さないと。どんな仕事だってするつもりだ。
パフェの為に。
「わかった」
その後西村くん達は部屋に帰り、俺は出かける準備をした。
ほんの少しだけお洒落…お洒落だよな。よくわからないけど、俺なりのお洒落を着込んだ。
薄水色のパーカーに、黒の膝丈のズボン。パーカーは、サイズが大きかった為か、指先が隠れてしまう。
交換し様にも、値札を切ってしまっていた。色が好きだけど、ぶかぶかだから今までお蔵入りしていた。中2の出来事。
今なら、身長が少しは伸びたはず。もしかしたら、小さく感じる事はなくても、ぶかぶかではないはず。多分。
……いやいや、おかしい。
身長殆ど、伸びてない…だと。指先が、隠れてしまった。
まあ、いいや。取り敢えず、カバンの中に財布と携帯を入れて、再度確認した。
「うん、大丈夫」
自分の部屋から出ると、リビングで寺下くんがくつろいでいた。
「行って来るね」
「あ、おう。行ってらっしゃい」
ヒラヒラと寺下くんに手を振ってから、俺は部屋を出て、寮からも出て行った。
雇ってくれるかな。一応、携帯で検索した。
色々なバイトがあって驚いた。
寮から近くが良いけどと、考えてたら…レモンが足元に落ちていた。
「…レモン?」
と、思いきや足元には沢山のレモンが転がっていた。
転がっている沢山のレモンを拾い始めた。
「…誰のだろう」
「あら、ごめんなさいね。ありがとう」
上を見上げると、太陽の日差しかその人の所為かはわからないけど眩しく、目を細めた。
「い、いえ」
俺は、拾いあげたレモンを渡そうとしたが、青年の両腕には袋で塞がっていた。
「ウチの店まで、持ってきて貰っても良いかしら?」
「あ、はい」
「ありがとうね」
ニコッと笑う青年に、俺はドキッとした。これが、大人の色気なのだろうか。
俺も、いつかこんな風になれたら何て思ったが、似合わないなと内心苦笑した。
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