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「山田」
ああ、ついに名前を呼ばれた。
「はい」
俺は、若干声が上擦った。
今、プッと笑い声が。きっと、中垣先生だろうな。
ドアノブに手をかけるも、緊張で開ける事を躊躇した。
さっきまでの勢いが萎む。
でも、入らないと時間だけが無駄に過ぎるし。
取り敢えず、中に入った。が、緊張からか、元々なのか何も無いはずなのにつまずきかけた。
「う、うわぁっ…」
あたりはシーンと、穴があったら隠れたい。恥ずかし過ぎる。
「と、取り敢えず…自己紹介、よろしく」
笑うのをこらえる様に中垣先生は言う。いっそう、笑わってくれた方がまだマシだ。
「…はい」
教壇に立った途端、頭の中が真っ白に。
ドキドキと、心臓が鳴る。
脈も打つ。
今更だけど、教室に入る前に『人』って3回書いて飲み込めば良かったかも。
「お、俺は…山田、純でしゅ。い…いや、違う。山田純です。よろしくお願いします」
勢いが良かった所為か、教壇の机に思いっきり頭がぶつかった。
「ッ……もう、ヤダ」
若干半泣き。頭は痛いし、自己紹介では語尾噛むし。
「取り敢えず、大丈夫か?」
俺は頷き、中垣先生に促される様に席についた。
席に、つまずかずについた事にホッとした。
「山田、教科書は届いてるか?」
「え、あっ。はい、寮の方に届いているはず…です」
多分と付け加えて。
「そんじゃあ、今日は隣に見せて貰え。以上」
そう言って、中垣先生は教室を出ていた。
教室の中は、お祭りの様に騒がしくなった。俺は、なれない教室の中でのんびりとあたりをみていた。
注目されない事をホッとした。ツラがいい訳でもない。普通。
喋りに言っては、お粗末。
「な、山田」
「ッ…な、何かな?」
ビックリした。心臓が飛びてそうなくらいに。
「ごめん、ごめん。おどかす気は無かったんだ」
気にしてない事を伝えると、彼は二カッと笑った。好青年って感じで、どんな相手でも好印象を持たれそうな笑顔をした。
釣られて、俺も笑った。
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