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「いらっしゃ……い」
開けて、若干固まってしまった。だってさ、目の前にいる彼はどうみても、西村くんではない。
「こんばんはです」
「こ、こんばんは」
のほほんとした雰囲気。和みそうになるくらいに。
「どうした、山田。…げっ」
寺下くんは、様子を見に来た途端可愛い顔を歪める。
「あ、寺下くん?」
「うわぁ、正行くん。良かったですね。こんな、可愛い子が相部屋が一緒で」
そう言いながら、彼は寺下くんに抱きつく。嫌なのか、寺下くんは彼の腕の中で逃げようともがく。
それにしても、可愛いと聞こえたが、聞こえない。
どう見ても、寺下くんの方が、一億いや比べること自体がおかしいくらいに、寺下くんが可愛い。
「いい加減に、離せ」
「えー、嫌です」
「俺が、嫌なんだ」
「ぼくは、このままが良いです」
2人の掛け合いが、余りにもおかしいからつい笑ってしまった。
「…山田」
「あ、ごめん。2人が、仲良しだなって思って」
「はい。とっても仲良しですよ。でも、君も一緒に」
「うわぁっ」
「き、清(きよ)」
彼は、俺も一緒に抱きついて来た。ふと、思った。
彼は、大型犬。まさに、それがピッタリなくらいに。
「お前ら、玄関前で何やってんの?」
苦笑しながら、西村くんは言った。
「あ、こんばんは」
「…よ。松田、時間勿体無いから、あとで抱きつけば良いから。今は、食堂行こうぜ」
「…わかりました」
渋々と、彼は俺たちから離れた。
「そう言えば、名前言ってませんでしたね。松田清です。宜しくお願いします」
「俺は、山田純。宜しくね」
「本当に、可愛い人」
「へっ……?」
飛び付かんばかりに、ギュッとしてきた、が、寺下くんによって阻止された。
それにしても、食堂が楽しみで堪らない。どんなのが、あるのか。
俺は、お腹が鳴りそうなくらいに。
でも、その言葉は食堂の中に入るなり消え失せた。
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