第1話

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「いらっしゃ……い」 開けて、若干固まってしまった。だってさ、目の前にいる彼はどうみても、西村くんではない。 「こんばんはです」 「こ、こんばんは」 のほほんとした雰囲気。和みそうになるくらいに。 「どうした、山田。…げっ」 寺下くんは、様子を見に来た途端可愛い顔を歪める。 「あ、寺下くん?」 「うわぁ、正行くん。良かったですね。こんな、可愛い子が相部屋が一緒で」 そう言いながら、彼は寺下くんに抱きつく。嫌なのか、寺下くんは彼の腕の中で逃げようともがく。 それにしても、可愛いと聞こえたが、聞こえない。 どう見ても、寺下くんの方が、一億いや比べること自体がおかしいくらいに、寺下くんが可愛い。 「いい加減に、離せ」 「えー、嫌です」 「俺が、嫌なんだ」 「ぼくは、このままが良いです」 2人の掛け合いが、余りにもおかしいからつい笑ってしまった。 「…山田」 「あ、ごめん。2人が、仲良しだなって思って」 「はい。とっても仲良しですよ。でも、君も一緒に」 「うわぁっ」 「き、清(きよ)」 彼は、俺も一緒に抱きついて来た。ふと、思った。 彼は、大型犬。まさに、それがピッタリなくらいに。 「お前ら、玄関前で何やってんの?」 苦笑しながら、西村くんは言った。 「あ、こんばんは」 「…よ。松田、時間勿体無いから、あとで抱きつけば良いから。今は、食堂行こうぜ」 「…わかりました」 渋々と、彼は俺たちから離れた。 「そう言えば、名前言ってませんでしたね。松田清です。宜しくお願いします」 「俺は、山田純。宜しくね」 「本当に、可愛い人」 「へっ……?」 飛び付かんばかりに、ギュッとしてきた、が、寺下くんによって阻止された。 それにしても、食堂が楽しみで堪らない。どんなのが、あるのか。 俺は、お腹が鳴りそうなくらいに。 でも、その言葉は食堂の中に入るなり消え失せた。
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