Four years ago 井ノ山 響

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柚がタクシーから手を振るのを見送った。 けれどまだ放心状態で、タクシーに乗り込める気分ではない。 学生時代から、さばさばしてて、豪快に笑って、そこらの男より男らしかった柚が? 『人のもんだと魅力的に写っちゃうんだよね。まやかしなのに』 最低発言を、豪快に笑いながら言ったけど、 柚だけは、私の知り合いの中で唯一の常識人だと思ってたのに。 「乗らないのかい? お嬢さん」 後ろから低い声がして、すぐに横にずれて譲った。 「先にどうぞ」 「ありがとう。だが……」 その男からは、強い煙草の臭いがした。 その臭いはよく知っていた。思い出の中で色鮮やかに臭うあの煙草。 ――私が知ってるあの人と同じ臭いの。 「だが俺は君と同じ場所に向かいたいんだよ。速水そら、さん?」 「は?」 見上げた先に、190センチはありそうな男が立っていた。 キザったらしく前髪を少しだけ足らし、長髪に近い髪をワックスでしっかり後ろに流している。 ヤクザみたいな真っ黒で上等なスーツ。スーツからでも分かる筋肉。 雰囲気からして怖そうというか、悪そうというか。
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