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「ストーカーじゃない。あれは約束のプレゼントなんだよ、お嬢さん」
「ふざけないで。じゃあ、私の荷物もあんたが?」
「ああ。漁ったがメールも写真も残ってねぇし、お嬢さんの荷物からは手がかりは得なかったけど、しばらくは人質に預かっとく」
「気持ち悪い! あんた、良い年したおっさんの癖に気持ち悪いわ!」
「それは、俺の肩書を知ってて吠えてんなら大したお嬢さんだが」
男は不適に笑うと、ホテルの方へ踵を返した。
ひらひらとゴツくて大きな手を振りながら。
「響に伝えるんだ。『あの日の続きを楽しみにしている』と」
「お断りよ。響は此処には来ないし」
「決めるのはお嬢さんじゃなく、響だ」
受付の前を通り、エレベーターの前に立ち、振り返ろうともしない男。
こいつが『あの日』に関係してて、私の前から響を奪った、男。
キザったらしくて、威圧感ばかり。
お兄さんの『Blumen und Himmel』みたいな花や潮の香りがしない、
花に埋もれた時間を奪い去るような驚異を持つ、男。
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