Four years ago 井ノ山 響

7/31
前へ
/37ページ
次へ
そらは外見とは裏腹に、甘えんぼで可愛い奴だった 。 モデルとかしてるから綺麗な女の子なんていっぱい知ってる。けどあんま興味なかった。 それもそらには居心地が良かったみたいだ。 綺麗なんだけどどこか冷めてて、隙を見せない卑屈屋。 プライドが高そうでなつかない子猫は、鳴き方を知らなかった。 両手を広げて抱き締めたら、喉を鳴らして甘えてくるのに。 そらが甘えられるのは俺だけ。 からっぽで退屈で、何か飢えてたから、 俺も全力で餌をあげた。 愛情をいっぱいあげればあげるほど、そらは俺を求めてくれた。 『代わりにそばにいてよ』 躊躇いもなく初ボーナスから俺にお金を差し出して貸してくれた。 ああ、めっちゃ可愛い。まじで愛しい。 人を好きになるって綺麗な心なんだな。 人を好きになるって視界が色鮮やかになるんだな。 一人じゃないって、世界が輝いて見えるんだな。 そう思って、『あの日』海外撮影に出発するはずだった。 向かった先は、打ち合わせを兼ねて空港近くのホテルだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加