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「嘉山狼って言うのね。あの筋肉スーツ野郎」
「会ったのか!? 何か言われた!?」
「私の荷物は、人質だって」
「……ごめん。でもほどいてくれたらもう迷惑かけないから。だから」
「嫌よ」
ベットに沈む響を見下ろしながら、冷たく言った。
「なんであの人から逃げてるの?」
「…………」
「まぁいいか。あの名刺に連絡して直接聞こうかな」
お兄さ……聖さんの方を振り向くと、聖さんは手のひらを広げた。手の平の中にはビー玉のように固く丸くなった名刺があった。
「――分かった! 言う! 言うから!!」
「本当に?」
「聖さん、ちょっとだけ席外してくんない?」
響が申し訳なさそうにお……聖さんを見て言ったら、聖さんは優しげに笑った。
「そら、拘束はほどかないで下さいね」
そう言って、私の手を掴むと丸まった名刺を手の平に乗せてくれた。
どれだけ力強く握り潰したのだろう。
……全然、ほどけない。
頑張ってほぐしていると、響がもぞもぞと私の方へ動いた。
そして何度も何度も息を吸って、吐き出して、
最後に覚悟を決めたように息を吸い込んだ。
「俺、嘉山狼と寝た」
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