Four years ago 井ノ山 響

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「寝た?」 「海外での写真集の撮影なんて嘘。嘉山社長にホテルで抱かれる間の偽装スケジュールだった」 「……何ソレ」 「俺が話し終えるまで何も言うな。終わったら罵ってもいいし、殴ってもいいから」 余りにも真剣な目で言うから、私は黙って頷いた。 ベットに背をもたらせ、響の顔を見ないようにした。 閉めきられカーテンもされた部屋は狭く感じて、お兄さんの甘い花の香りが強く香った。 「嘉山社長がゲイって噂はあった。お気に入りを自分のブランドのイメージモデルに使うって。俺、年齢嵩まししてたし、あの人の守備範囲じゃねーだろうしって思ってオーデション受けた。そしたら最終まで残ってて、撮影って騙されて嘉山社長がいるホテルに連れて行かれた」 「『あんな小さな事務所に、俺が仕事を頼むと思っていたのか?』って笑われた。俺が気に入ったからお前を選んだ。『Loup』のイメージモデルに為りたい奴なんざごまんと居る』って言われた。そしたら金縛りにあったみたいにその場から動けなくて。 抱かれたよ。そらという恋人がいるのに。 だっせぇだろ?」 力なく響は笑うと、震える声で話を続けた。 「あの親父、3日ぐらい離してくれなくてずっとベットの上だった。恋愛感情もねぇのに、抱かれて、すっげ汚ねぇの。気持ち良かったから段々麻痺してきて、俺、馬鹿みたいに欲情してた。 そらへの感情は綺麗で輝いてたのに、あの親父が俺を汚したんだ」
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