第4話

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「あんな小さな事務所に、俺が仕事を頼むと思っていたのか?」 同じ銘柄の煙草を吸う男だった。 それまで自分は身長もあるし、祖父がイタリア人だったから筋肉もつきやすいし、女を守れる強い男だと思っていた。 「俺が気に入ったからお前を選んだ。『Loup』のイメージモデルに為りたい奴なんざごまんと居る」 「そうですね。じゃあなんで俺を?」 その男は、俺と同じ銘柄の煙草を、灰皿に押し付けた。 酷く獣臭く、雄臭く、同じ男なのに、俺が狙われた獲物のように小さかった。 こんな屈辱初めてだった。 「言ったろ? 気に入ったからだと」 煙草の臭いを吐き出しながら、その男は獣のように笑ったんだ。 愛色花時間 ―あいいろはなじかん―image=478053307.jpg
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