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「あんな小さな事務所に、俺が仕事を頼むと思っていたのか?」
同じ銘柄の煙草を吸う男だった。
それまで自分は身長もあるし、祖父がイタリア人だったから筋肉もつきやすいし、女を守れる強い男だと思っていた。
「俺が気に入ったからお前を選んだ。『Loup』のイメージモデルに為りたい奴なんざごまんと居る」
「そうですね。じゃあなんで俺を?」
その男は、俺と同じ銘柄の煙草を、灰皿に押し付けた。
酷く獣臭く、雄臭く、同じ男なのに、俺が狙われた獲物のように小さかった。
こんな屈辱初めてだった。
「言ったろ? 気に入ったからだと」
煙草の臭いを吐き出しながら、その男は獣のように笑ったんだ。
愛色花時間 ―あいいろはなじかん―![image=478053307.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/478053307.jpg?width=800&format=jpg)
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