Four years ago 井ノ山 響

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手の平で転がした名刺を、響に投げつけた。 響は器用に、後ろ手でその名刺をほぐし始めた。 「聖さんを好きなのは、『あの日』の俺を払拭させて、男とも綺麗な恋愛ができるんだと思いたいのか、聖さんが助けてくれたからか……俺はまだ分からない。 俺の話はただ、それだけ。弁解も謝罪も薄っぺらいしな」 「…………あっそ」 立ち上がって、ベットに沈む響を見下ろした。 「馬鹿。響の馬鹿」 涙が溢れそうだったのを、グッと堪えた。 「事務所の事とか脅されたとか、話してくれても良かったのに」 「だって、格好つけたかった」 そう響は言うけど、簡単な事じゃない。 以前、海で『壮絶』だと馬鹿にしたけれど、 体で仕事をとらされて、脅された事の方が壮絶だと思う。 それでもあの時は、響に依存してた。何を知っても絶対に嫌わなかったし、そばにいたと思う。 ――弱い所とか知りたかった。 ――私に吐き出して欲しかった。 「――私ね、響とお兄さんしか好きになった事ないから分からないけど、それって『好き』って事じゃないの?」 「は?」 「身体が求めるぐらい、ね」
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