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手の平で転がした名刺を、響に投げつけた。
響は器用に、後ろ手でその名刺をほぐし始めた。
「聖さんを好きなのは、『あの日』の俺を払拭させて、男とも綺麗な恋愛ができるんだと思いたいのか、聖さんが助けてくれたからか……俺はまだ分からない。
俺の話はただ、それだけ。弁解も謝罪も薄っぺらいしな」
「…………あっそ」
立ち上がって、ベットに沈む響を見下ろした。
「馬鹿。響の馬鹿」
涙が溢れそうだったのを、グッと堪えた。
「事務所の事とか脅されたとか、話してくれても良かったのに」
「だって、格好つけたかった」
そう響は言うけど、簡単な事じゃない。
以前、海で『壮絶』だと馬鹿にしたけれど、
体で仕事をとらされて、脅された事の方が壮絶だと思う。
それでもあの時は、響に依存してた。何を知っても絶対に嫌わなかったし、そばにいたと思う。
――弱い所とか知りたかった。
――私に吐き出して欲しかった。
「――私ね、響とお兄さんしか好きになった事ないから分からないけど、それって『好き』って事じゃないの?」
「は?」
「身体が求めるぐらい、ね」
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