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響の目が見開いた。
私みたいな恋愛初心者が言っても説得力が無い、けど。
甘い、口づけしか知らないし。
花の香るような、時間しか知らない。
痛みは伴うし、涙は出るし、まぁ異物の感覚は拭えないけど。
響は体で求めちゃったのかもしれない。
相性の良い身体は、手放せなくて、欲しくて。
だから怖いのかも。逃げちゃうのかも。
――それが、自分を飢えて醜く感じさせても。
「嘉山狼と会いたい?」
「会いたいわけねーだろ!!」
「……へぇ、そう」
「そら、頼むからコレを」
「嫌よ。今行っても、響だけじゃない。お兄さんだって傷つくよ?」
私の言葉に苦い顔をした。
だから私は、響の隣に沈むように座る。
「本当に私たち、言葉が足りないよね」
言葉が足りなくても、分かり合えるぐらいの距離じゃないのに。
「ちゃんと、全部話そう。そうじゃなきゃ、あの時ああ言えば良かった、もっと気づけば良かった、とか後悔の繰り返し」
「そら……」
「ごめんね。愛情が欲しくて、響の考えてる事も考えないで一方的に愛して」
「違う! そら、俺はちゃんと!」
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