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いっつも、ちょっとワガママで、強引で、いっぱい笑顔をくれた。
――愛に痛みはつきものさ。
冗談混じりで笑っていたけど、確かにそうだった。
響は甘い痛みを教えてくれたんだから。
そんな響が弱くなったり悩んだり逃げたり。
それって、もしかしたら歪んでいても、変わった『愛の形』だったりして。
理想と違うから戸惑ってお兄さんに惹かれたり、私の為に胸を痛めてくれているならば。
解放してあげたいって思った。
「そら……」
「それ、貸して」
響から名刺を奪った。
響は名刺をほぐしてちょっと伸ばしてくれた。
ぐしゃぐしゃな皺だらけだけど、電話番号は微かに見えた。
「話は分かった。ショックだったし納得できないけど、響の置かれている状況は分かった。
で、響はどうしたいの?」
「…………」
顔を上げて、私の顔を真っ直ぐ見つめた。
「 」
それを聞いて、何だか安心して笑ってしまった。
「わかった。ちょっとお兄さんと代わるから」
名刺をポケットに隠して、お兄さんがいる部屋に戻った。
「ちょっと、静也くんの所に行ってくる」
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