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「何?」
――本当は、静也くんの家に移動させただけだけど。
あの家ならば、静也くんみたいな体格の家族ばかりだし。
嘉山は小さくなった煙草を灰皿に押し付けると、新しい煙草を口で抜き取った。
そして火をつけて、煙を吐き出した後、ゆっくりゆっくり間を置いて言った。
「ふっ。可愛いねー」
「なんで?」
「視線やしぐさで伝えたつもりだったんだが、響には言葉で言わなきゃ、俺は極悪非道なおっさんのままってわけか」
「そうよ」
「俺に抱かれるのがそんなに嫌なのかと苛々してたけど、響は俺に玩具扱いされるのが嫌で逃げてるわけか」
「…………そうよ」
頭の回転の速さにびっくりだけど、話が早くて助かった。
「っとに。この歳になると面倒で忘れてたな。身体を重ねたら愛も伝えなきゃいけねーんだよ。いくら身体で感じても、な」
「貴方はおじさんでも、響はまだ24歳ですからね。
で、脅しはどうなさるんですか?」
「はんっ。響の事務所みたいな弱小を潰して何が楽しいんだか。それにアイツはもうモデルもやらないだろうし。脅しは、素直じゃない響の為の、理由付けの為に決まってんだろ」
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