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「あんなオッサンのどこが良いやら」
「…………」
ホテルを出てから、隠してあったバイクからヘルメットを取り出して私に投げ渡した。
「響も素直じゃないからねぇ」
「静也くんも響はあのオッサンを好きだと思う?」
「さぁ? だがあんま詮索しない方が良い。首突っ込みすぎるのも、掻き回してしまうからな」
そう言って、エンジンをかけると風のように車をかき分けて走り出した。
真っ暗な海と対照的に駅前はネオンできらきら輝いている。
車が入らないような細道や地元の人しか分からない道を通りながら、帰っていく。
静也くんは、私やお兄さんと違ってこの綺麗な町で愛情を沢山貰って、生きてきたんだ。
自信というか迷いがないというか、私たちより大人なのは満たされているからかもしれない。
「あの人に響を奪われたままなのは悔しいけど」
「止めとけ止めとけ」
「お兄さんにはどう説明しようかな」
「――俺が言ってやるよ」
そう笑った後、あっという間についた静也くんの自宅の前で、ヘルメットを返した。
「静也くんも、首突っ込みすぎ」
クスクスと笑うと、静也くんも目尻をふんわり緩めた。
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