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水面を掬い上げながら、優しく笑ってくれた。
『そらちゃん……』
昔から、お兄さんのこの笑顔は変わらない。
どんなに知らない女を抱いてきたって。
汚れない。汚れてない。
それは響とは反対なんだろうな。
「そら……?」
ポタンッ ポタッ
水面に波紋が広がっていく。
私の涙が、どんどん薔薇の中に沈んでいく。
「寂、しかった……理由が…やっと分かった」
悔しくて唇を噛み締めても涙は止まらない。
膝を抱えて私は、馬鹿みたいに涙した。
「私…は、響に依存してたのに……響は、響は私じゃ変わ……らな…かった。綺麗な…ままだった」
メチャクチャに響を変えたのはあの人だ。
価値観も、地位も、全て壊すほど、あの人は響を変えて、私から奪った。
もし愛情が無ければ、まだ響は此方に居たかもしれない。
けどあの嘉山には、分かりにくいけど愛情があった。ちゃんと響を大切にしてくれてた。
「そらは、男同士は気持ち悪くなかったですか?」
優しく涙を脱ぐってくれて、お兄さんは真剣に聞いてくれた。
「気持ち悪いに決まってるわよ!! でも仕方ないじゃん、私が好きじゃないなら相手が同姓だろうが結果は同じだもん」
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