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「同感ですね。響は大切な僕の家族ですから」
――家族は抜きあったりしません。
「……響が居なくなるなんて、僕は耐えられるのでしょうか」
「私が居るじゃん」
「!?」
「――私は、もう離れられないと思うよ」
成り行きで此処まで来てしまったけど、
響の相手には苛々嫉妬もしてしまうけど、
響が居なくなったらお兄さんも私も一人じゃ居られないと思う。
それに。
抱き合ってしまった今、
お兄さんの匂い、感触、抱き心地、
全て全て、愛しくて離れられない。
体って、正直なんだ。私の可愛いげ無い言葉より、素直に伝わるんだ。
「ねぇ、お兄さん」
「そら、聖と呼んで下さい」
「聖さん」
バシャッ
水面が激しく揺れて、お兄さんが覆い被さった。
花の香りがするバスタブの中、
薔薇の花びらが舞う浴槽で、
甘くて深い口づけをした。
角度を変えて何度も。
息を吸うのを忘れるほど。
暖かくて幸せで、胸が甘く痛んだ。
確かに愛に痛みはつきものだ。
響を失ったとやっと理解した瞬間、
お兄さんの愛に気づいて、応えられたんだから。
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