Four years ago 井ノ山 響

28/31
前へ
/37ページ
次へ
「あんなに泣いて、社長の名前呼んで」 ……? 「あの時はびっくりしたよ。急に押し倒されて上に乗られたんだから」 苦笑いする静也さんに、俺は意味が分からず何を言うべきか分からない。 「『何言ってんの?こいつ』って顔してんぞ、お前。分からないならいい。だが、お前ら3人酒は飲むな」 「いや、待て! その発言からしたら俺とあんたは」 ヤったのか? 情けないぐらい掠れた声に、静也さんは優しく頭を撫でた。 「さぁな」 「静也さん!!」 ヒラヒラ手を振られたが、納得できなくて叫んでしまった。 「お前もそらもプライドが高いが、理由つけなきゃ愛せない辺りそっくりだよな」 「だから」 「お前が素直になりゃあ全部上手くいくぞ」 バタン ……くそっ 言いたい事だけ言って消えやがって。 卑怯じゃねぇか。 それに、こんな縛ったって、匿ったって、 あいつからは逃げられないんだ。 てか、なんで、俺は静也さんに乗ったんだ? 苦手だったじゃん。体格とか雰囲気とか、あの嘉山社長にそっくりで。 なのに……? 「響」 名前を呼ばれて顔を上げた。 「聖さん……」 「帰りましょうか」 そう言うと、聖さんは持っていたネクタイで俺の目を隠した。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加