第4話

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「…………」 足を忍ばせて、風呂場に向かった。 シャワーの音は依然として止まらない。 開け放たれた扉から中を覗くと、お風呂から湯気と二人のシルエットが浮かんでいる。 「見つかってしまったんですね?」 「うん……」 「事務所を辞めた今、脅される事はないでしょう?」 ――脅し? 「でも、そらの荷物があるから、逃げるの止めなきゃいけない。こればかりは、俺の責任だし」 「――こんなに震えているのに?」 「怖い。怖いよ、聖さん。俺」 弱気で縋る響の声。 聞きたくなかった。聞きたくなんて、なかった。 どんな言葉をかけて良いか分からずに、 私は静也くんのお店に逃げ込んでしまった。 「なんつー顔してるんだよ。そらちゃん」 ホット珈琲を出されて、身体の芯が温まってきた。 静也くんは昔から静也くんのままで安心した。 綺麗だけど男らしくなったお兄さんに、 別人のように弱くなってしまった響。 だから私は、馬鹿みたいに翻弄されてるんだ。 「お兄さんと寝た」 「!!?」 お湯が入ったポットをわざとらしく落とされた。
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