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「だから響が出ていくなら、私はお兄さんと幸せ。めでたしめでたし」
「ああ、そっか。響は邪魔者だな。で、なんかあったわけだな」
頷いて、珈琲の表面をフーッと揺らした。
私みたいに簡単に揺れる水面に笑いがこぼれる。
「なるほどなるほど。みんな困った奴だな。聖も響も、そらちゃんも」
「静也くん」
「プライドで恋愛してないか? 価値観やプライドやら邪魔する物は取り除いて恋愛しなきゃ」
「……おじさんの説教なら結構よ。うんざり」
「じゃあ簡単に寝るな」
静也くんのいつもより数段低い声に、珈琲の水面を揺らすのを止めた。
「求められたからって簡単に寝るな。本当に好きなら、相手の気持ち、利用すんな。
聖は、寝たら絶対依存する。裏切られたら、壊れるぞ」
「…………」
「お前ら3人は、相手の為にその身体を大切にしろよな。ったく」
「帰る」
カウンターに千円を置くと、目も合わさずに喫茶店を出た。
静也くんのわざとらしいため息が、深く深く心に突き刺さった。
逃げないで、言葉を選ばなきゃいけない。
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