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Four years ago 井ノ山 響
母さんが死んだ。
父さんは分からない。会ったこともない。
保険金でも返せないぐらい借金があったから、高校を中退して働いていた。
俺の働いてる居酒屋に、優しそうな坊主のおじさんが現れて、俺に話しかけた。
『君のお母さんには本当に助けられた』
『借金は肩代わりするから、私の事務所で働かないか?』
別に、同じ年の友達が学校に行ってるのは羨ましいとは思わなかったし惨めな気持ちとか知らなかった。
ただ、やっと病気の母に迷惑かけず自分の食べるもんだけ稼げるんだから楽だった。
社長は優しくて、高校中退は学歴に傷が残るからと、高卒認定試験を受けさせてくれた。
大学も進められたけど、やっと少しずつ仕事が入ってきてたから断った。
だって、社長の事務所って小さくて、全然コネや伝がなくて。
地元の広告や、展示会のお茶くみぐらいしか仕事が無かったしたまたま道でスカウトされた雑誌のモデルを引き受けてからちょくちょく仕事が舞い込むようになったんだ。
「うわー。まじ寒い!」
四月の終わりだったか始めだったか。
くそ寒い海で、始めての写真集の撮影をした。
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