Four years ago 井ノ山 響

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8 わくわくしてた。 寒い海で、夏のように振る舞わなきゃいけなくて。 自分を表現するの、滅茶苦茶楽しかった。 何人か地元の女の子たちが来ていたのも嬉しかったな。 雑誌でモデルしてるぐらいの俺に、黄色い声援を送ってくれて。 ――そらに会ったのはその時だった。 頬を染めて俺に手を振ったり、名前を呼んでくれたりする女の子たちの中で、一人毛並みが違ってた。 なつかない猫みたいに、凛とこちらを見つめて。 時折、海を見て寒そうに顔を歪めているし。 表情に意外と出ているの、分かってないんだろうな。 プライドが高い子猫は、綺麗な瞳で此方を見ている。 笑ったら可愛いだろうに。 誰に対してあんな顔をしてんだろう。 気になったから、撮影の打ち上げで酔いを冷ますために海に来た時、まだあの子がいて驚いた。 ――そして、嬉しかった。 想像した通り、喋ったらちょっとキツい口調だったけど、素直で可愛くて。 笑顔、見せてくれないかな?って興味を持った。 まだ俺には、仕事の楽しさと、男としての自信が溢れていた時の話だけど。 権力に屈伏したり、自分より強い男が現れる前の、 淡い淡い、初恋の話。image=478092231.jpg
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