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「じゃあ。また何かあったら話聞くから」
「うん。ありがと」
「もっとゆっくり話したいからさ、今度はもっと早めに会いに来いよ」
新婚の柚を呼び出して、ホテルのbarで一杯だけ飲んだ。上手くは説明できないんだけど、柚は何かあったんだろうとすぐに理解してくれた。
柚が煙草を吸い終わるまでの短い時間しか残されてない。
そう言えばこのホテル、響と初めて会ったホテルだし、初めての夜も此処だった。
海でしか会ってないから中は分からなかった。
ホテルの地下のbarは、夜の海の絵画が壁一面に埋め込まれ、淡い青いライトが輝くしっとりと落ち着いた雰囲気だ。
「柚は良いよね。公務員だし、結婚ラッシュに乗れたし。人生安定してるわ」
「ぶ!」
灰皿に吸い殻を押し消しながら、柚は吹き出した。
「誰にも言ってないからなー。んな安定してないよ?」
「謙遜は要らないわよ」
そう言うと、真っ赤な唇を歪ませた。
「だって慰謝料でまじ貧乏だもん」
目が点になった時、柚が追い打ちをかけるように笑った。
「不倫からの略奪婚なんだよ」
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