Four years ago 井ノ山 響

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「じゃあ。また何かあったら話聞くから」 「うん。ありがと」 「もっとゆっくり話したいからさ、今度はもっと早めに会いに来いよ」 新婚の柚を呼び出して、ホテルのbarで一杯だけ飲んだ。上手くは説明できないんだけど、柚は何かあったんだろうとすぐに理解してくれた。 柚が煙草を吸い終わるまでの短い時間しか残されてない。 そう言えばこのホテル、響と初めて会ったホテルだし、初めての夜も此処だった。 海でしか会ってないから中は分からなかった。 ホテルの地下のbarは、夜の海の絵画が壁一面に埋め込まれ、淡い青いライトが輝くしっとりと落ち着いた雰囲気だ。 「柚は良いよね。公務員だし、結婚ラッシュに乗れたし。人生安定してるわ」 「ぶ!」 灰皿に吸い殻を押し消しながら、柚は吹き出した。 「誰にも言ってないからなー。んな安定してないよ?」 「謙遜は要らないわよ」 そう言うと、真っ赤な唇を歪ませた。 「だって慰謝料でまじ貧乏だもん」 目が点になった時、柚が追い打ちをかけるように笑った。 「不倫からの略奪婚なんだよ」
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