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「いてぇよ!」
彩ちゃんの上履きを投げ返す風紀副委員長。
臣さんにバレたら怒られるぞー。
「わざわざ悪りぃな」
上履きを余裕で右手キャッチをした彩ちゃんはニヤリと笑った。
「くそぅ、俺よりイケメンは滅べばいいんだ」
なんて負け犬の遠吠え。
なっつんは前に向き直すとパソコン画面を見始めた。
「やっば!編入生いないじゃん!今どこ……廊下?!」
なっつんは編入生を見失ったようでカタカタと焦りながら操作している。
居場所を確認したなっつんは急いでパソコンの電源を落とすと鞄に閉まった。
それと同時に前側の扉が開く。
「おら、席につけー」
怠そうな声音で入ってきたのは我らが担任の一ノ瀬竜丸[イチノセタツマル]
赤茶色の癖っ毛を耳の上で切り揃えて後ろを刈り上げた髪型で黒縁眼鏡を付けている。
服装は白Yシャツに黒のパンツ、担当教科が化学なので白衣着用が基本スタイル。
目に覇気はなく面倒なことが大っ嫌いだが、イケメンな為に生徒に人気な教師。
俺はたっくんって呼んでる。
「アンニュイな雰囲気が素敵……」
後ろの席からうっとりとした声が聞こえてきた。
たっくんには耳を劈く悲鳴はおこらなくて、見惚れる生徒が多いんだ。
「いない奴を教えろー」
「皆います」
出席を取る気のないたっくんにやれやれといった感じで答える眼鏡学級委員。
赤縁眼鏡を掛けた見た目クール系中身オカン男子の学級委員は周防光邦[スオウミツクニ]って名前だ。
ミックって呼んでるんだけど、呼ぶ度に冷たい目線が突き刺さる。
ミックいいじゃん。
「そうか」
たっくん、礼くらいはしようよ。
「今日はこのクラスに編入生が来てる」
その言葉で教室の中は一気にざわつき始めた。
かっこいい人がいいとか可愛いやつがいいとか期待を込めた言葉が聞こえてくる。
なっつんはわくわくしてるようで落ち着きがない。
「綺羅、入れよ」
たっくんにしては優しさが含まれた声音だな。
どうやら皆もそう思ったらしく、教室に軽い緊張感が走る。
なっつんはデジカメとテイッシュを準備し始めた。
「竜丸!!!待ちくたびれたぞ!!!」
ガシャーン!と扉を破壊しそうな派手なお……ひしゃげてる。扉が少しひしゃげてるよ……。
扉を変形されるほどの馬鹿力の持ち主は、王道一直線の印象。
定番の黒マリモみたいな髪型に瓶底眼鏡に低身長、不快が半端ない大音量の声。
なっつんの言ってた通りだ。
関わりたくない。
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