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待ちくたびれたってさあ、たっくんが来て数分も経ってないよな?
待ちくたびれるほど経ってないよな?
たっくんの元にずんずん!と歩く編入生の様は随分勇ましく、容姿とかけ離れた感じがチグハグすぎて好ましくない。
まあ、先入観もあるからなんでも好ましく見えないんだろうけど。
「ああ、悪いな」
「謝ってくれたから許してやる!!!」
たっくんが穏やかに笑いながら編入生の頭を撫でてる姿に、編入生の上から目線すぎる発言に静かに見惚れるがポリシーだった教室が嘘の様な大絶叫に支配された。
あああああ!!煩い!!
俺の静かで居心地が良かった教室はどこに!?
もう、たっくんの編入生対する態度に戦慄を覚えたし、教室は険悪な雰囲気だし、隣の彩ちゃんはこの騒々しさ苛立ってるのが見なくても気配でわかるし、なっつんの方からピピッと電子音が聞こえるから写真撮ってるんだろうし、とりあえず、前から目線を外してなっつんの後頭部でも見ておこうそうしよう。
「藤堂綺羅[トウドウキラ]だ!!!お前ら皆友達だ!!!よろしくな!!!」
うーわー、ないわ。
いきなり50人いるこのクラスメイト全員と友達宣言ないわー。
俺、死んでも嫌だ。
「は?アンタ頭大丈夫?」
「いきなり友達宣言とかキモッ!!」
「お前と友達になるくらいならダンゴムシと友達になるほうがマシだ!!」
「お前、見た目厳ついくせに虫ダメだよな。見た目厳ついくせに」
「う!うるせぇ!ダメなもんはダメなんだよ!」
「でも、ダンゴムシって気持ち悪いからわかるなー僕」
「いや、君はまだ中性的な顔立ちだから違和感はない」
「トンボってよく見たら気持ち悪いよな」
「テントウ虫って持ってたら黄色い汁出すよな、あれなに?」
「しらね、排泄物じゃね?」
「うげぇ!!」
「うはっ!www編入生酷い言われようwwwだがそれがいいwwwwwwてかてか、途中から虫の話があちこち上がってる件wwwwww編入生<虫ですかwwwwww」
これをカオスって言うんだね?お姉様。
最後のなっつん、そこには同意だ。
「うるせー、黙らないと成績下げるぞ。あと、綺羅に何かしてみろ、退学にしてやるからな」
意外と生徒想いのたっくんが横暴職権乱用に成り下がってしまった。
たっくんのあまりの贔屓っぷりにさらに教室は静かになったが更に険悪な雰囲気が増した。
「で、綺羅の席はそこだ」
たっくんが指したのは真ん中の列の一番前。
ミックが座っている席。
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