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そしてその魔性という名の非常な現実は、早速ピローの背後に迫っていた。
ふと振り向くと、月明かりを背にした黒い人影が仁王立ちをして自分の方を向いている。それでいて気配を全く放っていなかった。
右手に拳銃を持っている。
ピローは息を飲んだ。海賊だ。
(この俺が、こんな所で終わるのか。)
ピローは腹をくくった。しかしブラッドストーン船長の配下にあってこんな失態があるのか。そんなはずはないとの思いがこの窮地にあっても拭えなかった。
ただ、現実とはこんなものである。
「ツキのない事に、まずい船を襲ったもんだな。」
ピローは海賊に警告を発したが、しかし敵は引き金を引いた。そして発砲。
後方で水音がした。
弾丸はピローの横をかすめて、別のターゲットに命中。銃を持った男はピローを素通りして船の手摺から身を乗り出すと、海面へ向かってその後何発も発砲を続けた。その音をきっかけにほうぼうで発砲音が鳴り響いた。
ピローに引き金を引いた敵の正体は、ブラッドストーンであった。
容赦ない銃撃は数十秒もすると鳴り止んだ。状況が掴めないピローであったが、何かしらプロの仕事が施されたようである。
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