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海風の中、ラピスラズリ号を仰ぎ見ながらブラッドストーンは吸殻を指で弾く。
「軍事兵器を載せた船が海賊なんかにそう易々とやられるものではない。」
「内通者の手引きか。」
「そもそも兵器も乗組員ものっていたかどうか。しかし海賊が軍の武器を持っているのは間違いないだろう。」
「なぜ。」
「なぜとは。」
「軍と蜜月だと。」
「そんな事はどうでもいい。黒幕の手の内なんぞ気にならんね。」
膨大な貨物の山を前に無法地帯へ命掛けで挑む『当事者』の口から発せられる言葉にしてはあまりに軽率である。つまりこの男にはなにかしらの勝算がある。イアンノーネはそう感じた。
「カリブ海に白波立てるなら何人(なんぴと)であれそれなりの資質というものがいる。つまり向こうさんもそいつは計算に入ってなければいけない。」
かつてカリブ海には「ジョン・ブレーカー」という天才的な海賊がいた。まだ10年ほど前の話である。
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