カリブ

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狙った獲物の輸送日、輸送船、その保管場所を事前に把握しており、船員を素抜くようにして大海原で大量に貨物を奪うと後は煙の如く消え去った。 貨物隠匿の冤罪で投獄された船員は12名。後に盗品の一部が何者かによってニューヨークタイムズに郵送されてきた為、冤罪の解けた12名は全員釈放となり、検察は歴史上に残る汚点を世にさらした。 ジョン・ブレーカーという名が世に知られ、またこの冤罪事件の黒幕と断定されたのはその三年後で、その切っ掛けとなったのが「海賊狩事件」である。ある時点からジョン・ブレーカーは、言わば同業他社であるカリブ海の海賊を掃討する奇策に討って出、無慈悲の内に全滅せしめた。民間人には傷ひとつ付けず、ラスベガスのイリュージョンショーさながらのパフォーマンスを披露した人物とは同一と認めがたい凄惨且つ残虐な攻撃で、そこかしこに二流の海賊の屍の山を築いた。 陸に紛れんとした残党に至るまでついぞや絶命し、全くもって容赦がなかった。最後に死んだ男はメリアントスの場末の酒場で「奴が来る。奴が来る。」と震えた声で連呼し続け、一体誰が来るんですとバーテンが応じると、泣きながら「ジョン………ブレーカーだ………… 」と答えたきりジンのショットグラスを握りしめたまま白目を剥いたという。
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