カリブ

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ラピスラズリ号の出港は貨物積載に手間取り、定刻より一時間半遅れた。激減したカリブ海の貨物船の中でも特に人気の高いブラッドストーンの船に荷主が殺到した為である。 実のところ太平洋でも幾度か海賊に遭遇していたものの、全て跳ね返したという噂が彼にはある。しかし民間人の武装が違法である為、その事実を本人は否定している。武装の件を黙殺するためには敵の全滅が必須である為、ブラッドストーンは船を沈めるのは当然だが、乗船に至った海賊も皆殺しにして海に捨てたという話である。 また、あらぬ噂では海賊を捕虜、水先案内人として使いアジトまで乗り込んで他船の盗品を奪還、売却して私財とし、そしてその私財がまた武装費用に回るという仕組みを確立しているとの憶測もある。つまり 「海賊の海賊」 というのだ。 「人類、否、宇宙の存在意義は退屈の打倒にある。実に有意義な伝説であるので、大いに御広告願いたい。」 これがブラッドストーンの反応である。 アンソニー・ブラッドストーン。1964年ミシガン州グランドラピッズに生まれる。大農園の長男。大学卒業後独立。以後家族とは疎遠。実質、少年期から両親より経済的自立を躾られ、その両親の所有する小麦農園の運営と学業の両立に加え、独自に養鶏業を開拓し成功。貯めた資金で両親から農地を買い取ると、独自に成功を納めた養鶏業もあわせて同じく少年期に自ら雇用した従業者の筆頭、ミシェル・クランスバートに売却。自らは大学卒業後に海運会社へ就職した。
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