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手元には、見たことの無い生き物が表紙にドット絵で描かれている一冊の本。
目の前には、ごく普通の部屋の壁。
ここは夢の中だ。と言う事には気が付いていた。それ故に、冷静でいられた。
だが、夢にしてはやたらと鮮明だった。手元の本も、景色も、はっきりと分かるのだ。
「ここは…?」
慎重に、壁に触れる。
途端に、目の前が真っ白になった。
気が付くと、大平原の中に立っていた。
「!?」
少し驚いたが、夢だからと思えばそうでもない。
しかし、この場所には何もない。
「…歩いてみるか」
それしか選択肢はなさそうだった。
……………
しばらく歩くと、ちらほら木が生えているのが見えた。普通の木だった。
「本当に普通の木かな?」
調べようと、触れた。
瞬間、また目の前が真っ白になる。
……………
気が付くと、今度は大きな穴の前に居た。
遺跡の様な壁に囲まれ、その壁には所々石像がある。
二ヶ所だけ出入口らしき穴があり、中央の四角い穴を間に挟んで対になっている。片方は石像がシンプルで、片方は石像装飾が少し派手だ。
中央の四角い穴は、深くて何も見えない。怖いと思った。
「あっちに行ってみよう」
装飾が豪華な方に入ってみる。
トンネルをくぐると、目の前に現れたのは…土俵と、その上で相撲をする力士だった。
「この夢の中で初めて人に会えた…あの、すいません、ちょっといいですか?……あれ?」
よくみると、力士は薄っぺらく、土俵はドンドンと叩かれているように揺れていた。
「紙相撲……?」
なんだ、と思いながら奥に進む。
その先は、桃色の道だった。さながら生き物の体内と言ったところだろうか。
迷路の様な道を進むと、何かの鳴き声なのか、よくわからない音が聴こえてきた。
聴こえてきた方向に向かうと、赤ん坊のような物体がふよふよと浮かびながら奥へと進んで行く。
後を追うと、遠くにその赤ん坊のような物の集団が見えた。
だが、近付く前に目が覚めた。
~~~~~~~~~~~~~
目が覚めると、そこは「明月壮」の自室だった。
そういえば、夢の始まりもここだった。夢の中だと現実の事を少し忘れているみたいだ。
ふと手元を見ると、夢の中で手にしていた本があった。
「え………?」
本の生き物の中心部に、灰色のドットが上書きされている。
よくみると周りはグラフのようだ。
「なんだろう、これ」
しかし、その本を開くことは出来なかった。
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