DAY_001

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手元には、見たことの無い生き物が表紙にドット絵で描かれている一冊の本。 目の前には、ごく普通の部屋の壁。 ここは夢の中だ。と言う事には気が付いていた。それ故に、冷静でいられた。 だが、夢にしてはやたらと鮮明だった。手元の本も、景色も、はっきりと分かるのだ。 「ここは…?」 慎重に、壁に触れる。 途端に、目の前が真っ白になった。 気が付くと、大平原の中に立っていた。 「!?」 少し驚いたが、夢だからと思えばそうでもない。 しかし、この場所には何もない。 「…歩いてみるか」 それしか選択肢はなさそうだった。 …………… しばらく歩くと、ちらほら木が生えているのが見えた。普通の木だった。 「本当に普通の木かな?」 調べようと、触れた。 瞬間、また目の前が真っ白になる。 …………… 気が付くと、今度は大きな穴の前に居た。 遺跡の様な壁に囲まれ、その壁には所々石像がある。 二ヶ所だけ出入口らしき穴があり、中央の四角い穴を間に挟んで対になっている。片方は石像がシンプルで、片方は石像装飾が少し派手だ。 中央の四角い穴は、深くて何も見えない。怖いと思った。 「あっちに行ってみよう」 装飾が豪華な方に入ってみる。 トンネルをくぐると、目の前に現れたのは…土俵と、その上で相撲をする力士だった。 「この夢の中で初めて人に会えた…あの、すいません、ちょっといいですか?……あれ?」 よくみると、力士は薄っぺらく、土俵はドンドンと叩かれているように揺れていた。 「紙相撲……?」 なんだ、と思いながら奥に進む。 その先は、桃色の道だった。さながら生き物の体内と言ったところだろうか。 迷路の様な道を進むと、何かの鳴き声なのか、よくわからない音が聴こえてきた。 聴こえてきた方向に向かうと、赤ん坊のような物体がふよふよと浮かびながら奥へと進んで行く。 後を追うと、遠くにその赤ん坊のような物の集団が見えた。 だが、近付く前に目が覚めた。 ~~~~~~~~~~~~~ 目が覚めると、そこは「明月壮」の自室だった。 そういえば、夢の始まりもここだった。夢の中だと現実の事を少し忘れているみたいだ。 ふと手元を見ると、夢の中で手にしていた本があった。 「え………?」 本の生き物の中心部に、灰色のドットが上書きされている。 よくみると周りはグラフのようだ。 「なんだろう、これ」 しかし、その本を開くことは出来なかった。
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