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喉が裂けそうだった
足がもつれそうになったけど、走るしかなかった
大人たちの怒声に追われ、空気がピリピリとする
命の危機を感じた
胸の中の小さな命を必死に抱き締めて、小枝が全身を傷付けても構わず走った
足の先の感覚はない
鼻も冷たくて機能しない
満身創痍でも走ったのは、守りたい命があったから
「もう…いいよ。朔。」
そう呟いた大切な人は、僕の胸で小さく息をした
「あなたなら解るでしょう?どのみち僕は助からない。」
答えられなかった、いや、答えたくなかったのかも知れない
脳が全力で現実から目を反らした
「忘れないで、朔。終わりはない。僕たちは呪いで永遠に在り続ける。」
震える指が俺の頬を撫でた
雪解け水のように冷たい
「時は巡っても…」
俺たちは一緒だ
何度でも君を迎えに行くよ
何十年も何百年も、何千年も俺は君を探すよ
俺は覚えたての言葉で想いを漏らした
「あ、愛してる…。陽姫…。」
初めての言葉、使い方はあっていたのだろうか
やがて、二人の体を槍が貫く
また終わり、直ぐに始まるのだろう
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