第三章

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第三章

 生憎の曇り空だが、風の弱い深夜。  俺はトナカイに跨がりながら、目標物となる建物を探して自分の担当区域を飛んでいた。 「あそこの辺りは、小さい子供が、集中してるんだよな。カードとか、軽いものばっか……なら大通り側から回るかな」  結局、あまりきちっとしたルートを決められないまま、初日の飛行訓練に入ってしまった為、慌ててルートを検索中だ。  飛びながら考えてメモを取り、また飛んでは考える。  これが結構しんどくて、思わずーー栞姉に頼で一緒に考えて貰う方が良かったか。と言う甘い誘いに釣られそうになってしまう。  だけど、これ以上負担をかけるわけにはいかない。ただでさえ心配をかけてるんだから余計に。 「ここはこんなもんかな。後は……あそこ、か」  六つ程の町や市を確認し、予定ルートをトナカイにインプット。これで漸く、ある程度の時間を割りだせそうだ。  最後にふわりと加速して、ある目的地を目指す。  眼下の町で広がるイルミネーションから遠ざかること数分。  数年前は一度深夜に。最近は昼間に行く、闇夜でもぼやっと白く浮かび上がる建物、病院へとたどり着いた。 「街から、飛ばせば十分かからないで来れる、かな?」  人里から少し離れていると言うこともあって、一番最後に回す事にしたんだが、何となく近寄りがたい。  やっぱり、昼に来るのと夜に来るのとでは、印象が全然違う。最近はよく来てるんだから見慣れたと思ったんだけどな。  邪魔しているのは、恐らく、父さんの時に体感したイメージ。それから、二つの悩み事。 「ここもプレゼントを、配らなきゃならないんだ。気合い入れなきゃ……な」  必要な時間と小児病棟の位置、人数だけを確認する。取り敢えず、今必要なことは全てやったはずだ。  ーー帰ろう。今一度浮かび上がる病院チラリと見てから、俺はトナカイを一路埼玉支部へと加速させた。  
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