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「で、クリスマスプレゼントは何が良いんだ?」
「要らないってば。子供じゃあるまいし」
そんな会話が始まったのは、俺の飛行訓練が終わってからたっぷりと十一時間後。最後に確認に行った、病院の中で、だ。
白い個室。その中に置かれた、少し大きめのベットに少女がひとり座って居る。
華奢な身体に、ピンクの花柄を彩ったパジャマを着てふて腐れているのは、俺の妹様でもある紗綾。
「まだ成人してないんだから子供で良いんじゃないか?」
「自分が成人したからって、大人ぶっちゃってさー。成人式だってまだなのに」
「なったもんはなったんだから……しょうがないだろ」
新しく水を入れ換えた花瓶に、今朝持ってきた切り花を入れていく。
今朝、栞姉から持ってってくれと言われた物だから名前は分からないが、良い匂いのする花だ。寒くなってきて締め切り状態の室内に、キツすぎない甘い香りが漂い始める。
「それ、栞姉から貰ったでしょ」
「ん? そうだけど……何でわかったんだ?」
「兄さんには、花を選ぶセンスのセの字も無さそうだし」
「お前なぁ……」
例え本当の事だとしても、言わないで黙っておく優しさって、あっても良いと思うぞ。
思わず溜め息を吐く俺とは対照的に、クスリと 笑いながら、コロンとベットに寝転がる紗綾。
「ごめんごめん、一割くらい嘘。その花、今度買ってきてくれるって栞姉言ってたからさ」
「そうだったのか」
あれだけ夜に働いて、昼間には大学にも顔を出して、紗綾の所にも寄って。あの人はちゃんと寝てんのか?
人の心配をしてる身分じゃないのは分かっちゃいるんだけど……取り敢えず、この花の事はきちんと礼を言わなくちゃな。って、ん?
「今、一割位って言ったか? 九割本心だったよな?」
「かわいい妹からの警告だよ。もっとセンスを磨けって」
にっこりと元気な顔で笑ってくれるのは、大いに結構なんだが……内容が内容なだけに俺は笑えないぞ?
「そこは嘘でも良いから嘘だと言っとけ。悪いようにはならないから」
「ごめん、実は嘘だったの……」
「そう、それで良いんだって」
「本当は本心から駄目だなって思ってた
」
「もう、がっかりしか出来ねぇよ……ったく。じゃあ帰るからな」
「はーい、気を付けてねー」
何時も通りと言えば、何時も通りの面会の帰り道なんだけど……結局今日も聞き出せなかったな
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