第三章

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 悩みのたね二つ。両方共に、クリスマスの当日の……紗綾に関して。  シスコンだと言われてしまえばそれまでなんだが、たった二人の兄妹だ、心配位するぞ?  あの快活そうな性格に反して、紗綾は身体が弱い。小さな頃こそ元気に走り回っていたんだが、今はそれも儘ならない。  そればかりか、去年は一年間粗病院のベットの上で生活していたくらいだ。  そんな彼女が迎える今年のクリスマスは、神様の悪戯なのか、それとも普段の行いか。その日病院に行ける人が粗居ない。  服飾デザイナーの母親からは、数ヵ月前からクリスマス近辺は激務、命日だからと、お線香をあげに家によるので精一杯だと聞いているし、俺も栞姉に確認した所、クリスマスの夜は荷物の積込で、母さん同様かなり激務となるらしい。 「だからこそ、プレゼント位は用意したかったんだけどな……」  何を聞いても要らないの一点張りだ。  サンタクロースが聞いてあきれるな。プレゼントが用意できないサンタクロースだなんて、ってさ。  結局、何も思いつかないまま最後のルート確認を終えて、トナカイをコンテナにしまう。  明日は荷物の確認やら積み込みやらで忙しいだろうし、せめてお見舞いくらいは行かないとな。少し汚れてしまった荷台に登り、乗せるプレゼントに汚れがつかないよう、自分なりに丁寧に拭きあげる。 「お、関心だねぇ~」 「栞姉か?」 「はい、お疲れ様」  暖かい紅茶とともに姉さんが現れたのは、作業を始めてから丁度一時間が経過した頃だった。 「いよいよあさってだねぇ。緊張する?」 「まぁ、少しは。栞姉に心配かけない程度には頑張ろうと思うけど……ってそうだ。切花、ありがとうな。紗綾も喜んでた」 「あ、ちゃんと届けてくれたんだ。からかわれなかった?」  どこかいたずらっぽく笑うその顔は、昼間の紗綾ソックリで、どうしても苦笑混じりの返事になてしまう。  それに、なにか思うことがあったのだろう。今度はなにか納得したように頷くと、紅茶を荷台に置いた。 「その様子じゃ、しっかり成功したみたいだねぇ」 「成功って、栞姉からすればそうかもしれないけど、俺としたら大恥だったんだからな」 「あはは、ごめんごめん。私も行く暇があれば自分で行ったんだけどねー」  
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