第三章

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 ――そうか、栞姉忙しくて……  そう考えると、からかわれても怒れなくなるよな。元々怒るつもりもないけどさ。  栞姉だって三年目といえども、リーダーは初めてだろうしな。プレゼントリストを見たときにはそう思ったはずなのに、この数日でそれが当たり前になっていた。 「えーっとその、ありがとうな」 「何? コーちゃん今日はデレ期なの?」 「デレ期とかじゃない。それと、コーちゃんはやめろよな」 「はいはい。それじゃ、お姉ちゃんは一足先にお休みさせて貰うねー」 「あぁ。お休み」  姉さんは少し眠そうな声音で囁くように言うと、フラフラとした足取りで出入口へと向かう。  あの姿が、本物の……小さい頃は憧れていた本物のサンタクロースの姿、なんだろうか。  本物のサンタクロース、か。実際に数年前に壇上に立っていたヨボヨボのじいさんと一緒にされたら、さすがの栞姉も怒るかな? いや、どちらかと言えば、飛び上がって喜びそうだよな。  そこで、ふと思いついたのは言うまでもなく、先程までの悩みの種の事だった。  ――栞姉なら、こんな時どうするだろう?  そう思ったら、もう体は動いていた。 「栞姉!」  正直、これ以上心配をかけたくないと言う気持ちも有る。だけど、時間がないこともまた事実で……。  俺が抱えていた、世間様から見ればちっぽけかもしれない悩みを、今の気持ちが消えないうちに打ち明ける。  そんな俺の言葉を、さっきとは打って変わってリーダーの顔をした姉さんは、途中でおちょくるようなことはせず、静かに最後まで聞いてくれた。   「なら……」  そっと姉さんが口を開いたのは、たっぷりろ十秒たった頃だった。 「空を、見せてあげるのはどうかな?」 「空?」  空なら、病院のベッドからでも見れる筈だ。なのになんで?  そう訝しむ俺の表情がわかりやすかったのだろう。違う違う。そう言うように首を振って、視線を俺から背後の【トナカイ】へと向ける。 「そ、今コーちゃんが……ううん。コーちゃんと、コーちゃんのお父さんが見てた空。見せてあげるのもいいんじゃないかな?」 「父さんが……見てた?」  長くなるからと、一旦その場での話を終えた翌日。その早朝。  姉さんが淡々と告げる一時間に及ぶ昔あった出来事。その一部を聞いた俺は、一言感謝を告げ、準備を始めた。昔夢に見たサンタクロースになるために。
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