第一章

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 俺は、サンタクロースなんて嫌いだ。  子供にプレゼントを配って回る。大いに結構。それが本当に全ての子供に配られるのなら。  だけど、実際はどうだ? 世界中からすれば、ほんの一握りの子供たちにしか、それは配られない。  皆が平等に生きられない事は重々承知だ。そして、貰えなかった子供も確実に居るって事も。  ーーだから、本当に不思議なんだ。  俺が今『サンタクロース』として、このクリスマス前最後の決起会に参加してることが。 「よし、そろそろ担当を決めるぞ」  全体の集会も昨日終わり、自分の出身地である関東支部に到着したのは今朝。  クリスマスまでは、残すところあと1週間だ。  少しの休憩を挟んだ後、再び集合、点呼を終えると、早速本題が始まった。 「芦田、飯島、梅野、榎本、大崎、それから中原に支倉は第4班。リーダーは中原! 頼んだぞ」  「了解しましたー!」  着々と皆が名前を呼ばれていく。  そんな中、東京、神奈川、千葉と呼ばれて続く第四班。埼玉担当で漸く【支倉】という俺の名前も呼ばれた。 「良かった、一緒の班だねコーちゃん」 「コーちゃん言うな。大体出身地から選ばれるんだから順当だろ」 「そ? そっか、そかもねー」  あははーと、隣で楽しそうに笑って居るのは、小さい頃から面倒を見てもらっていた姉さん。  リーダーの所に、中原栞と言う彼女の名前が書かれたボードを受け取ると、ボールペンと一緒に差し出す。  サンキューと簡単に受け取ってはいるものの、多少面倒くさそうにみえるのは見間違いじゃないだろう。  この人にはリーダーになったって言う緊張感は無いのだろうか?  「それより、栞姉はリーダーだろ。他の五人集めなくて良いのか?」 「おぉ、コーちゃん。それ、ナイスアイデアだね! はい、4班集合!」  この少し抜けててぼんやりしている栞姉さん。  毎年アルバイトのサンタクロースが多く入れ替わる中、彼女は今年でサンタクロース三年目なんだそうだ。  バイトで二年目連続サンタをやる人ってのは、極めて異例らしく、連続でサンタクロースをやっている人間は、全国でも十数人しかいない、と言うから驚きだ。  それが姉さんは三年目。ともなれば、どれだけ面倒でもリーダーになるのは当然だろうに。  まったく予想してなかったのだろう。このあとどうしよう、なんて呟きが聞こえてくるのが不安でしょうがない。
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