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「よし、それじゃあ埼玉を7分割するかー。大体均等になるよにしなきゃだねー」
このアルバイトを続けられない理由は、大きく別けて二つだ。
まず、第一にお金にならないから。
危険手当て等で、多少は有るのだが、子供に夢を配る仕事だ。お金目的でやるわけにはいかないし、そのような運営も出来ないだらしい。
第二に、普通の仕事をしていては出来ないから。特に活動時間帯は深夜のみ、と言うのが大きい。
正直、時間帯を考えると大学生かフリーター位にしか出来ない。が、そこらのファーストフードで働いた方が余程稼げる 。
そんな条件を考えると、人数が増えないと言うのもまぁ頷ける。
「よしっ、こんなもんかなー。じゃあ、あなた達はこことここ。それからこの範囲で良いかな? 私が広めにとった秩父方面を担当するから、コーちゃんはここね? 異論は?」
さくっと、市町村の分かれ目で一県を七等分にすると、片手のファイルとデータを見ながらポンポン決めていってしまう。
抜けてるように見えて、こうパパッと決められる辺り、リーダーなんだなと、思えてしまうから不思議だ。
栞姉の雰囲気に圧倒されてか、それとも本当に異論は無いのか、誰も手を挙げずに、自分達の手元へと担当範囲を書き写し、飛行ルートを考え始める。
予定の変更も無さそうなので、俺も回りに習うと担当の範囲を写していく。俺の出身地を含んだのはたまたまなのか、それとも……。
チラリと横目で仕事を終えた姉さんを見ると、何時もの笑顔を崩さずに同じ様な作業をこなしている。
「どしたの? コーちゃん」
視線に気付いたのか、どこか楽しそうに俺の手元を覗き込む姉さん。
やっぱ、どう考えても気を使ってくれたんだろうな。
自分の町の空を【飛べる】様に。
「栞姉」
「ん? なぁに?」
ありがとう、そう喉元まで出かかったんだが、感謝の言葉を紡ぐことが出来ずに。天の邪鬼な俺の口は、どこでどう間違ったのか、結局お決まりの口答えしか出てこなかった。
「飛行ルートくらい自分出決められるからこっち見んな。あと、コーちゃん言うな!」
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