第一章

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 殆んどのサンタがそうであるように、俺も多少時間に余裕がある大学生だ。とは言え、授業を休むわけにもいかない。  この日は昼からの学校に備えて早めに上がらせてもらい、赤服から着替えると、市バスに乗り込む。  暫くすると、手元の携帯端末へ次々とリストが送り付けられてきた。  担当地区の子供たちが、サンタ宛に。今回で言えば、俺へと綴った手紙の内容だ。 「仕事早いなぁ……」  リストを纏めて区分けしてるのは、恐らくと言うか、十中八九リーダーの姉さんだろう。張り切りすぎて、クリスマス前に倒れる、なんてことないと良いけど。  このプレゼントを直接用意するのは、実は俺ではない。プレゼント班と呼ばれる人達が今頃必死になって子供たちへのプレゼントを買い出し、或いは交渉に向かっているだろう。  サンタクロースがするのは、主にプレゼントを効率良く配ること。  当日のルートは担当サンタに一任されてるため、そのサンタの好きに決められるのだが……重いものや壊れやすい物はは優先的に配りに行きたい。  なので、予めルートを作るためにもリストを送ってもらっているのだ。  大学に着くと、取り敢えず講義のテキスト等を広げて、それから自分の町の地図も、横に広げる。 「って壊れ物ばっかか。ま、しょうがないっちゃしょうがないんだけど」  今時、御菓子と書く子はもう皆無だ。それらを貰うような子は字を書けないような年齢の子が殆どだろう。  人形、なんかはまだ可愛いもので、ゲームや重いもので天体望遠鏡なんてものまであった。 「これ、きっついなぁ……」  ルート決めの初めの一筆すら書けないまま始業のチャイムが鳴りそのお音にすら気がつかないまま、俺は頭を抱えながらその日を終えることになった。
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