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第二章
ーー夜に、サンタが降ってきた。
去年のクリスマスの事だ。
大学の講義で遅れに遅れた帰宅路に、そいつは突然降ってきたんだ。
本当に、何の前触れも……いや、微妙な警告と共に
「あーぶなーいよー!」
「はぁ? へ? うおっ!」
慌てて後ろに飛び退く俺の、本当に数㎝。目とはなの先を【バイクのような物】が、赤い閃光を残して通りすぎて止まる。
余りにも突然だったからか、後ろに跳んだまま、受け身もとれずに腰をしこたま打ち付けた。
かなり痛い。でも、まだ我慢できる痛さだ。それよりも問題は突っ込んできたバイクの方。
回りは住宅地。何処かに衝突した音はしなかったものの、かなりのスピードだ。取り敢えず無事かどうかを確認しようと立ち上がると、
「あーっ、コーちゃん! 怪我しなかった?」
「コーちゃんは止めろっ……って、栞姉?」
ゴメンゴメンと何時もの調子で謝る栞姉。ヒラヒラと片手を振りながら歩いてくる位だから、怪我は無いんだろう。
ただ……何時もと違うせいか、妙に不思議な人にしか見えなかった。
とても普段着とは思えない、赤いコスプレの用な衣装。
本当に運転出きるのか? と、疑いたくなるような大形バイク……のような乗り物。それから、大量に積まれたプレゼント達。
「栞姉? なに……やってんだ?」
「えー。見てわからないかなぁ」
目の前まで来てから、片足でくるりとターン。 腰にくくりつけていた三角帽子をかぶり直すと、両手を広げて嬉しそうに笑った。
「今日のお姉ちゃんは凄いよー。何とサンタさんです! サンタクロース! コーちゃん、メリークリスマス!」
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