第二章

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「サンタ? 栞姉が?」 「あー、信じてないね?」  ムッとしながらも、手を差し出してくれる栞姉。  何か気恥ずかしくて、その手を断ると、自力で立ち上がってから、何時も通りの口を開いた。 「信じるも何も、サンタがこんな町中をバイクで疾走はしないだろ」 「バイクじゃないよ! あたしのトナカイ!」 「いや、トナカイって、言われても……」  チラリと視線を動かす。トナカイと呼ばれたバイクっぽい乗り物へと。  確かに、バイクではない。どちらかと言うと雪山で見かけるスノーモービルに似ている。だけど、こんな住宅地を走れるなんて、バイク以外には考えられないんだが。 「あ、コーちゃん。私、まだプレゼント配らなきゃだから、もう行くね。車とバイクとサンタに気を付けるんだよー」 「ぶつかってくるサンタは姉さん位だからな!」 「え? サンタに見える? やだ、もう照れるわー」 「自分で言ったんだろ。サンタこそ人殺さないよう安全運転でな」  よいしょっと声を出しながら、大形スノーモービルに跨がる姉さん。  両手足を確認すると、にっこりと笑って、 「だいじょぶ! さっきのはコーちゃんを驚かそうと思っただけだから」 「驚く前に死ぬっての!」 「大変! 死なないよう、気を付けてね!」 「姉さんの……って、もう良いや。まだ何か残ってんだろ?」 「そだねー。じゃあ、コーちゃん。気を付けて帰るんだよ!」  ヒラヒラと振っていた手で、スノーモービルっぽいトナカイとやらのハンドルを握り込む。  ぐいっと栞姉がハンドルを回した瞬間だった。 「え? 浮いて……」  最後にもう一度にっこり笑うと、ふわり夜空へと舞い上がる栞姉とトナカイ、それに沢山のプレゼント達。  そんな光景が忘れられなかったからだろうか? 姉さんに引っ張られるまま、嫌いだった筈のサンタ。その服に、袖を通すことになるのは、それから、一月経った一月の中頃だった。
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